SHIBUYA109 lab.所長・長田麻衣さんに聞く“Z世代の推し活トレンド”
POTATOが主催する、推し活グッズのNo.1を決めるイベント『#推し活AWARD2023』の審査委員長に、SHIBUYA109 lab.の所長・長田麻衣さんが就任! 毎月200人ものZ世代と触れ合われている長田さんに、最新の推し活トレンドについて話をうかがいました。Z世代にとっては、どんな消費行動も推し活が軸になっているそうで…?
幼い頃から“推し”の文化が身近で、推しがいることが当たり前のZ世代
――月に200人ものZ世代とお話されているそうですが、推し活について感じられたことはありますか?
長田麻衣(以下、長田)「推しがいることが当たり前の世代だなと思います。週に1回、いろいろなテーマでグループインタビューを行っているのですが、自己紹介で絶対みんな推しの話をするんです。
それをきっかけに話が盛り上がっていて。必ず一人は推しがいるのが当たり前の世代なのかな、と」
――今、Z世代の82.1%もの人たちが「自分に推しがいる」「オタ活をしている」と認識している(SHIBUYA109 lab.調べ)というデータも出ているんですよね。
長田「昔はオタク というと、知識が深くないと自称しにくかったり、ネガティブでニッチなイメージを持たれることもあったと思うんですが、今はもっとオタクの概念が浅く広くなっていて。
みんなに推しがいて、それがSNS上で“見える化”していることで、自分に推しがいることも言いやすいんだと思います。Z世代のコたちは、小さい頃からAKB48やモーニング娘。などの存在があったことで、“推し”の文化が身近だったのもあるかもしれません」
推しが絡むものごとへの熱量と発想力がすごい!
――ここ数年は、コロナ禍でいろいろな制限がありましたが、Z世代の推し活にも影響はありましたか?
長田「コンサートなどのオフラインの現場がなくなっても、推し活の熱量は下がるどころか、むしろ上がっている感じがありました。推しへの愛はあるのに発散する場所がない中、おうち時間はたっぷりあるという状況により、創作活動が活発になった印象があります」
――どんなものが創作されていたんですか?
長田「誕生日ケーキを作ってみたり、サイリウムをデコってみたり。アニメ好きのコで、推しの等身大パネルを作っている子もいました(笑)。コロナ禍に手作りのものがたくさん誕生して、推し活の幅が広がった感覚でしたね」
――熱量がすごいですね。
長田「これはコロナ禍に限ったことではなくて。毎年トレンドは変わっても若いコたちの推し活への熱量はずっと変わらないんです。今は、どんな消費行動も推し活が軸になっていますね」
――印象的な事例はありますか?
長田「特にすごいなと思うのは、自分自身の名前を入れる想定で提供されているカスタマイズ系の商品に、推しの名前を入れているコが多いことですかね。
例えば、名前を刺しゅうできるタオルや、ネームプレート。あれに推しの名前入れるのか~! って衝撃でした(笑)。そうやって、どんなことも推しに紐づけた消費行動が見られるのがおもしろいです」
――推しに影響された行動も見られたりするんですか?
長田「ありますね。例えば、推しのコンサートグッズでSDGsを意識したものが販売されると、自分も意識しなきゃと思って社会課題に関心を持ち始めるコがいたり。あとは、推しの趣味がゲームであることをきっかけに、eスポーツに興味を持つコがいたり。推し活とはかけ離れているように思えるジャンルでも、推しが絡むことで行動の幅が広がっているように感じます」
Z世代の推し活のキーワードは“余白”と“概念”
――熱量のあるZ世代には、どんな推し活アイテムが刺さるのでしょうか?
長田「アレンジの余白がありつつ、推しの概念を楽しめるものがいいと思います。というのも、これだけ推し活がメジャーになっているとはいえ、みんな周りの目は気にしていて。コンサートの日は推しの写真をスマホケースに挟むけど、普通の日にオタクを丸出しにはしたくなくて、推しのモチーフのものに変えていたりするんですよね。
例えば、ローラースケートを得意とするグループのファンのコは、コンサート以外の日はローラースケートのイラストが描かれたスマホケースを使っていると言っていました」
――推しのビジュアルそのものではなく、“概念”なんですね。
長田「はい、推しの概念をネイルのデザインに落とし込むこともはやっています。わかる人にはわかるぐらいの、さりげない方がいいんでしょうね。こういった、推しのモチーフなどの概念を楽しめるアイテムは、結構需要がある気がします」
――概念は推しによって異なるからこそ、アレンジできるアイテムの方がいいのでしょうか?
長田「今は推しも細分化・多様化していて。昔はジャニーズとK-POPなど、オタクの界隈の区別がはっきりしていたのが、今はその垣根がなくなってお互いの文化が混ざってきているのもあって。ちょっとしたアレンジで使い分けられるものの方が、界隈関係なくだれもが楽しめるんじゃないかと思います。自由にカスタマイズできると、自分なりの愛を形にできますしね。アレンジできる“余白”は大事だなと思います」
――今回『#推し活AWARD2023』にノミネートされているアイテムはいかがですか?
長田「このバインダー、かわいいですね! 作りもしっかりしているし、自由にカスタマイズもできるし。チャームをつけられるホールまで付いているなんてすごい!」
長田「クリアで中身が見えるバッグ、今はやってますね。二次元が好きなコたちがよく持っている大きい痛バッグだと、面積が大きすぎて推しで埋め尽くすのが大変ですけど。これぐらいならちょうどいいし、マチもあって荷物も結構入りそうですね」
長田「このスマホケースは天才すぎる(笑)。常にアクスタを連れてお出掛けできるんですね。アクスタを立てられる穴がこんなところに空いているケースなんて、見たことない!(笑)」
長田「ティアラもかわいいし、斬新。ライブ中はサイリウム両手持ちしたいし、首からうちわを下げて両手が空くのはありがたいですね。お家に飾っておいてもかわいいですし。推し活のアイテムってこんなにあったんですね、感激しました。私も作ってみたい!(笑)」
――最後に、今回審査委員長を務めていただく『#推し活AWARD2023』への思いを聞かせてください。
長田「推し活は、みんなが楽しいことが一番だと思っていて。楽しみ方が増えれば推し活の幅もどんどん広がっていくと思うので、推し活の市場が盛り上がっていくことに貢献できたらうれしいです。」
■プロフィール
長田麻衣●おさだ・まい…総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPR サポートを経て、2017年に株式会社SHIBUYA109 エンタテイメントに入社。SHIBUYA109 マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018 年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround 20(15歳~24 歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
宣伝会議等でのセミナー登壇・TBS『ひるおび!』コメンテーター・著書『若者の「生の声」から創る SHIBUYA109式 Z世代マーケティング(プレジデント社)』、その他メディア寄稿・掲載多数
■#推し活AWARD2023
投票期間:2023年6月7日(水)~6月30日(金)23時59分
投票結果は、2023年8月7日(月)発売の『POTATO』9月号の誌面と、POTATO webの『#推し活AWARD2023』特設サイトにて発表。
特設サイト:https://potatoweb.jp/oshikatsu-award-2023/
■#推し活AWARD2023 期間限定ポップアップ概要
開催期間:2023年8月4日(金)~8月18日(金)
会場:SHIBUYA109 B1F IMADA MARKET POPUPスペース
(住所:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2丁目29-1)
撮影/我妻慶一 取材・文/田中千尋